こんな本読みました「アポロ18号の殺人」

読みやすいですよ

今年(2022年)の夏に発行された新刊です。上下2冊です。出版は早川書房、ハヤカワ文庫SFの2375.2376です。

この本を本屋で見かけて帯を読んでみると「ありえたかもしれない過去への、興奮の旅。宇宙飛行士について書くのに宇宙飛行士は最適だ!」と書いてあるのですが、この帯の文章を書いたのが、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」の作者のアンディ・ウィアーです。今年の初めに本屋で見かけて買ったのですが、内容が面白いのと翻訳がとてもよかったので、アンディ・ウィアーの本を続けて読んだくらいでした。そのウィアーがコメントを書いている本なので、きっと自分には読みやすいだろうと思ってジャケ買いしました。(本でもジャケ買いと言うのでしょうか?)翻訳作品が読みやすいか、読みにくいか。あるいは面白いか、面白くないかは翻訳者の腕だと思っています。この本はハルにとっては当たりでした!

幻のアポロ計画

この本の作者はクリス・ハドフィールド。カナダの生まれだそうです。予備知識なく、読み進めていて感じたのは、NASAの内情やアポロ計画についてかなり細かく描かれているなということでした。なぜかというとこのクリス・ハドフィールドは本当に宇宙にいった宇宙飛行士なんです。彼は1995年と2001年にスペースシャトルで宇宙に行き、また2012年にソユーズで3回目の宇宙へ行って、カナダ人として初めて国際宇宙ステーションの船長を務めた人だそうです。なるほど、どうりで宇宙に関することに詳しいはずです。地球上での打ち上げまでの段取りや、打ち上げロケットの内部の様子、また宇宙空間での人間のからだの状況など実体験に基づいて描いていますので、臨場感があります。

しかし、歴史上の事実と違う大きな点が一つ!今の若い人たちアポロ計画と聞いてもしらない人が多いと思いますが、1961年から1972年にかけて行われた、アメリカ合衆国が月に人類を到達させるという計画です。1961年に当時のアメリカ大統領のJ・F・ケネディが発表しました。アポロ計画は予算の問題などもあり17号で終了したのでした。したがってこの小説のタイトルである「アポロ18号の殺人」は、パラレルワールド的にアポロ計画が継続されていた状況下で話しが進みます。

ストーリー(ネタバレなし)

主人公カズ・ゼメキスは1973年にアポロ18号の打ち上げスタッフとしてヒューストンに着任する。今回の計画には東西冷戦が大きくかかわっており、宇宙空間や月の上でも様々な冷戦や実践が行われ、人の命も数人奪われてしまいます。当時の米ソは宇宙開発を巡ってもしのぎを削っており、どちらが宇宙に人を先に送ったか、どちらが先に月面に到着したかなどに先を争っていました。争うというよりも競い合って、科学技術の発展に結び付けばいいのですが、科学の歴史は戦争の歴史でもあります。戦争があったから科学技術が発展したという一面があることは大きなことではないかと思います。そのような先を争う技術戦争というか、今回は月面であるものを見つけて、それを科学技術にどのように活かしていくのかという点が争いの源として描かれています。      この本の日本での題名が「アポロ18号の殺人」となっているのですが、原題は「The Apollo Murders」です。直訳すると「アポロの殺人」。本の中で描かれているのは、アポロ18号計画を巡る話しなのですが、日本の題名であえて「アポロ18号・・・」と入れなくてもいいいのではないかなと感じました。本を読む前に思っていたのは、アポロ18号の中で殺人が起きるんだろうということでしたが、実際は・・・ もしこの本をお読みになる方がいらっしゃいましたら、原題の「アポロの殺人」という題名だと思って読み進めることをお勧めいたします。

この本を読む前は、松本清張カズオ・イシグロなどSF以外の本を読むようにしていたのですが、学生時代からSF好きでしたので読書がどうしてもSFに片寄ってしまします。でも好きなので仕方ないですかね(笑)